日米比較でわかる、ロイヤリティプログラムの違い
多くの企業が、顧客との継続的な関係を構築し、顧客ロイヤリティやリピート購入を高めるマーケティング施策として、ポイント制度や会員プログラムなどのロイヤリティプログラムを導入しています。一見すると、日本とアメリカのロイヤリティプログラムは似たような仕組みに見えます。しかし、実際に両国で生活すると、ポイント制度や会員特典の設計、顧客との関係づくり、プログラムの利用方法などに違いがあることに気付きます。
この記事では、日米それぞれのさらに、アメリカ企業の具体的な事例を通して、これからの顧客ロイヤリティを高めるためのロイヤリティプログラムについて考えます。ポイントプログラムや会員制度の特徴や違いを比較しながら紹介します。
目次
1. ロイヤリティプログラムとは?
2. 日米の主な違い
3. 違いが生まれた背景
4. 米国企業の事例から見る、これからのロイヤリティプログラム
おわりに
1. ロイヤリティプログラムとは?
ロイヤリティプログラムとは、企業が顧客に対して提供する特典制度の総称です。会員限定の特典や割引、ポイント制度などが代表的な例です。企業にとってはリピート利用を促進し、顧客満足度やブランドへの愛着(ロイヤリティ)を高めるマーケティング施策として広く活用されています。近年では、購入だけでなく、SNSでのフォローやレビュー、友人紹介、イベントへの参加など、ブランドとのさまざまな接点に対して特典を提供するプログラムもあります。日本でもアメリカでも多くの企業が導入していますが、その仕組みや重視するポイントには、それぞれの市場や消費者文化を反映した違いが見られます。
2. 日米の主な違い
日米では企業が重視する施策や消費者が価値を感じるポイントには違いがあります。以下は代表的な3つの違いです。
- クレジットカードリワードの存在感
アメリカでは、クレジットカードがロイヤリティプログラムの重要な役割を担っています。日々の買い物でカードを利用することで、ポイントやマイル、キャッシュバックなどの特典を受けられる仕組みが広く普及しています。現金を使わずに支払う文化が広がる中で、カード会社や企業は利用促進のためにリワード制度を発展させた結果、消費者がカードを選ぶ際にも、ポイントやマイル、キャッシュバックなどのリワードが重要な要素になっています。こうした流れを受けて、クレジットカード自体が顧客との接点となり、ポイントやマイルを通じて企業との関係を築くツールになっています。日本でもクレジットカードによる還元は広く利用されています。しかし、アメリカのようにクレジットカードそのものが顧客との関係を築く主要な接点となるよりも、決済サービス、複数のサービスを横断するポイント制度が発展してきました。 - 共通ポイントとブランド独自のプログラム
日本では楽天ポイントやPayPayポイントなど、多くの店舗やサービスで利用できる「共通ポイント」の存在が大きく、日常のさまざまな場面でポイントを貯めたり使ったりできる利便性があります。反対にアメリカには「共通ポイント」という考え方は普及しておらず、企業ごとに独自のロイヤリティプログラムを展開するケースが多く見られます。例えば、特定の店舗やブランドの利用を促す会員制度やアプリを通じた特典提供など、ブランドとの継続的な関係づくりを重視しています。日本は「幅広く使えるポイント」、アメリカは「特定ブランドへのロイヤリティ形成」に重点をおいている点は大きな違いです。 - 会員制度によるユーザーとの接点
アメリカの小売業では、会員向けの割引価格やアプリを通じたクーポンの配信など、電話番号の登録やアプリを利用することで得られる特典が日常的に利用されています。スーパーや小売店で会員価格が通常価格と大きく異なることも珍しくありません。一方、日本ではポイント還元やスタンプカードのように利用回数や購入金額に応じて特典を得るなどの、再来店のモチベーションを高める仕組みが長く親しまれてきました。近年では個人経営の店でもLINEなどを活用したデジタルのポイントカードも普及していますが、紙のスタンプカードのようなフィジカルな仕組みも多く残っています。アメリカは「会員になることでその場で特典を獲得する仕組み」、日本は「利用を重ねることで関係を深める仕組み」が発展してきたと言えます。
3. 違いが生まれた背景
日米ロイヤリティプログラムの違いは、単なる制度の違いではなく、それぞれの国の消費文化や市場環境を反映しています。
- キャッシュレス・決済文化の違い
アメリカではクレジットカードを利用して支払う人が多く、カード会社と企業が連携したリワードプログラムが発展してきました。消費者は買い物の際に「どのカードを使うか」を考え、ポイントやキャッシュバックなどの特典を最大化を狙う傾向があります。日本では近年キャッシュレス決済が普及しているものの、現金払いを利用する消費者も依然として多く、決済手段そのものよりも共通ポイントを軸としたサービス展開が広がってきました。このような違いがアメリカの「クレジットカードを中心とした還元」、日本の「ポイントを中心とした消費体験」という、それぞれの異なるロイヤリティプログラムの発展につながっています。 - 消費者が求める価値の違い
ロイヤリティプログラムにはそれぞれの国の消費者が感じる「お得」の価値観も反映されています。アメリカでは、自分のライフスタイルに合わせてサービスを選び、積極的に特典を取りに行くという消費行動が根付いています。そのため、利用状況や目的に応じてメリットが変化する仕組みや選択肢の多いプログラムが受け入れられやすい傾向があります。日本では、日々の生活の中で無理なく利用できることや、小さなメリットを積み重ねることに価値が置かれてきました。現金払いを含む多様な決済習慣や頻繁に利用する店舗との継続的な関係を大切にする文化が、ポイントカードやスタンプカードにような仕組みの普及につながってきました。このように消費者が求める「便利さ」や「お得感」の違いが、それぞれの国にあったロイヤリティプログラムの形を生み出しています。
4. 米国企業の事例から見る、これからのロイヤリティプログラム
米国企業の事例から見る、これからのロイヤリティプログラム
米国のロイヤリティプログラムには、ポイント還元にとどまらず、顧客がブランドを身近に感じ、継続的に利用したくなる仕組みが取り入れられています。具体的な事例を見てみましょう。
- Moon Juice(ウェルネスブランド)
初回購入:登録時にディスカウント
継続購入:購入金額に応じてポイントを付与
SNS:Instagram・TikTokのフォローでポイントを獲得
会員特典:新商品の先行アクセス
特徴: 購入だけでなく、SNSでのブランドとの接点もロイヤリティにつなげる - Liquid Death(飲料ブランド)
購入:商品購入でポイント(Skulls)を獲得
リワード:貯めたSkullsを限定グッズやアパレルと交換
SNS:XやFacebookでシェアするとSkullsを獲得
特徴: ポイントの名称やリワードにブランド独自の世界観を取り入れている
こうした事例からも、これからのロイヤリティプログラムでは、単に「ポイントを貯めて割引を受ける」だけでなく、顧客がブランドに愛着を感じ、継続的な関係を築いていけるような仕組みづくりが重要になるでしょう。
おわりに
日米のロイヤリティプログラムを比較すると、同じ「顧客との関係づくり」という目的でも、その仕組みや重視するポイントには大きな違いがあることがわかります。ロイヤリティプログラムは、消費者文化や市場環境を映しだすものです。日米それぞれの特徴を知ることで、普段何気なく利用しているサービスの背景にある企業の戦略や工夫をより深く理解することができます。
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