【高齢化が進む社会の中で】シニアフレンドリーなWEBサイトを考える。
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はじめに
社会の高齢化、ということが言われ始めてから久しいですよね。かつては、インターネットやWEBは若者のもの、という通念がありましたが、それも今は昔。今後さらに着実に増えていくシニアユーザーをどう取り込んでいくかが大きな課題として掲げ、WEBに限らず、世界中のあらゆるジャンルの企業や社会が“シニア層”を新たな「成長市場」として本気で取り込み始めています。そんな今の流れの一例をまずは紹介します。
アメリカ:「アクティブ・エイジング市場」として注目
- テック業界のシニア市場参入
- AppleはApple Watchで心拍・転倒検知・ヘルスケアアプリを強化。
- Amazonは高齢者向けにAlexa連動の介護支援ツール(Care Hubなど)を展開。
- Google Nestも高齢者向けスマートホーム化を後押し。
- 金融&保険のパーソナライズ
- 退職後の資産管理・年金シミュレーションアプリが急増(例:Fidelity、Betterment)。
- 高齢者向けに「詐欺対策」に力を入れた銀行サービスも増加。
- 小売・Eコマース
- ウォルマートやCVSなどは、薬の定期配送・ヘルスケア商品に特化した会員制サービスを強化。
- 文字サイズの拡大、対面サポートとの連携などでUXを改善。
日本:世界トップクラスの超高齢社会に対応中
- 自治体・企業での「ユニバーサルデザイン化」
- JR東日本など鉄道会社は券売機・改札機のUIを大きく見直し。
- みずほ銀行などの金融機関も“人が対応”する支店を一部で維持。
- スマホ教室(ドコモ・auなど)が全国に展開。
- リタイア世代向けの再雇用ビジネス
- ヤマト運輸「シニア配達員」制度や、パート・ボランティアの再雇用プログラムが活発化。
- シニア起業支援(東京都、民間スクールなど)も盛んに。
- 旅行・趣味・終活市場の拡大
- JTBやクラブツーリズムなどは「60代以上向けの趣味旅」や「一人旅プラン」を強化。
- 終活や相続対策関連サービス(遺言、デジタル終活)の市場も急拡大中。
世界全体のトレンド:「シニア=消費しない」は過去の話
- “シルバーエコノミー”が巨大マーケットに
- EUでは「シルバー経済」が2030年までに6.4兆ユーロ(約1,000兆円)規模になると予測。
- WHOも「アクティブ・エイジング」が社会政策の重要柱として推進。
- シニア×テックの掛け合わせ
- 各国で「デジタルデバイド(技術格差)」を埋めるための補助金政策あり。
- シニア向けのUI/UX設計、AIサポート製品、遠隔医療、VRフィットネスなどが次々登場。
WEBにおける、シニアフレンドリー化の重要性
さて、本題に戻って、WEBの側面でのシニアフレンドリー化の重要性について考えてみましょう。
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高齢者のネット利用が増加している
- スマホやタブレットの普及で、シニア層のインターネット利用率は年々上昇。
- 銀行、買い物、病院予約、行政手続きもオンラインで完結する時代に。
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ユーザー数として無視できない層
- 世界最高の高齢化率を誇る日本だと、65歳以上は約3,600万人(総人口の約30%)。
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アクセシビリティ対応が全体のユーザビリティ向上につながる
- 大きな文字、見やすい配色、分かりやすいナビゲーションなどは、実は全年齢層にとっても使いやすい。
- 若い人も一時的に視力が落ちる環境(屋外、夜間など)で助かる。
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法的・社会的な流れも後押し
- 国や自治体のサイトはアクセシビリティに関するガイドライン(WCAGなど)を義務づけていることも。
- 企業もCSR*1やSDGs*2の観点から「誰にでも使いやすいデザイン」が求められるように。
*1 Corporate Social Responsibilityの略で、「会社が利益だけじゃなく、社会や環境にも責任を持とう」という考え方。
具体例
- 環境に配慮した素材を使う
- 働きやすい職場づくり(育休制度、障がい者雇用)
- 地域のイベントや学校への支援
- 高齢者や弱者にもやさしいサービス設計(=シニアフレンドリー化)
*2 Sustainable Development Goalsの略で、国連が定めた「2030年までに達成すべき17の目標」。
一部抜粋すると:
| 目標No | 内容 |
|---|---|
| 3 | すべての人に健康と福祉を |
| 5 | ジェンダー平等を実現しよう |
| 8 | 働きがいも経済成長も |
| 10 | 人や国の不平等をなくそう |
| 11 | 住み続けられるまちづくりを |
| 12 | つくる責任 つかう責任 |
| 13 | 気候変動に具体的な対策を |
シニアフレンドリーなサイト作りのために意識すべきこととは。
では、実際にサイトをシニアフレンドリーなものにするには、具体的にどんな対策をするべきなのでしょうか。調査してみました。
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設計:迷わせない・わかりやすい構造にする
対策 理由・ポイント ナビゲーションは明快に グローバルメニューは上部 or 左側固定、カテゴリは少なく絞る 重要な情報は目立つ位置に ファーストビューで「なにができるサイトか」一目瞭然に パンくずリストを入れる 現在地を把握しやすくする 操作に確信が持てるUI ボタンは明確に“押せそうな見た目”に -
デザイン:見やすさ・読みやすさを最優先に
対策 推奨値・ヒント 文字サイズは最低16px シニア層には18〜20pxが理想。 高コントラスト配色 白×黒/濃紺×白 など、背景と文字に明確な差を フォントはゴシック系 明朝や装飾系は読みにくくなる 余白・行間をたっぷり ゴチャっと詰め込まない。呼吸できるデザインに ピクトグラムやアイコン併用 テキスト+アイコンで直感的に操作可 -
機能・動き:安心・スムーズに使えるようにする
対策 説明 ボタン・リンクは大きめに 指でも押しやすいように、タッチサイズは最低44px四方 動きやアニメは控えめに めまい・混乱を防ぐため、アニメーションは最小限 拡大・音声読み上げに対応 ブラウザズームやスクリーンリーダーへの対応必須 フォーム入力は簡潔に 入力項目を減らし、エラー文も丁寧に。 操作ガイドを用意 よくある質問や、使い方ページを設けると親切
おわりに。
こうやって見てみると、高齢化をそこまで意識せずともUI/UXの観点から我々が普段から心掛けていることが多いです(皆さんはいかがでしょうか)。結局、多くの優れたUI/UXの原則は、結果的にシニアにも優しい設計になっているということなのでしょう。さらにターゲット層にシニアが含まれる場合は上記のようなことをさらに意識して微調整を加えるという意識が重要ですね。
橋本 直紀
ウェブデザイン周り、主にコーディングを担当する傍ら、メルマガ「編集部」一員として、ニュースレター「Seek-ten Times」冒頭のコラムを毎月執筆。 フィラデルフィアで生まれ(生まれただけ)、神奈川で育ち、東京の大学を卒業、その後ポートランド~LAと渡り歩く。色んな縁に巡り合ったものです。
